『英国パブリック・スクールへようこそ』発売記念イベント 2018-09-23

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美しき英国パブリック・スクール 英国パブリック・スクールへようこそ!

前作『美しき英国パブリック・スクール』上梓がもう二年前なんですね。出てすぐ書店で手に取り、何か理由があって見送り(雨で傷めそうとか)、気づいたら版元品切れでプレミアになっておりました。しくじった。今回の御本は前のめりで発売記念イベント会場で頒けていただきました。前作もお願いしたら用意してくださり(もうないって)、二冊並べてわたしはしあわせです。一冊目の帯は萩尾望都。パブリックスクールといえば萩尾望都先生なのかな。マンガもけっこう傷で、読むべき時に読めなかった。自分にとってパブリックスクールは『アナザー・カントリー』でありそれ以外ではない(偏った知識)。

会場は大森「葡萄屋ギャラリー」でした。池上通りのちょっと古びた商店街の中で異彩を放つ豪奢な建物。天井が高いのです。まずは三種の英国菓子(イートン・メスと言われても謂れがわからない)とニルギリファーストフラッシュがストレートで供されます。ミルクティじゃないんだ…? 貴重な参考図書(豪華な洋書やパブリックスクール入学案内パンフ…)が回されてスライドショーで学校別に写真を見せていただきました。数百枚あったかと。燕尾服はイートンだけとか、共学も多いのですよとか、本当に最高の教育をする学校なんだなー、とよくわかりました。広いんだよ、ゴルフコースが丸ごと入った学校とは何なんだ。全寮制の年間の学費が 500 万円× 5 年ですって…。最高の教育を求めて世界中から学生が集まる。25% が留学生でインターナショナルである。世界の富裕層はこうして再生産されているのですよ、わかりますか(よくわかった)。

パブリックスクールへの憧れは、十三才の良家の子らが一年生として燕尾服着て集っている空間の非現実感であり、いい教育を受けたかったという灼けるような羨望でもある。自分の中高は公立でした。成績が良ければいい学校(って?)に行けるというイデオロギーを信じさせられたけど、それはまやかしだった。いい教育を受けるには成績の前にお金がいる。お金をかけても見込みのない子もいるでしょう、かけなければ、広々した視野の全国レベル、さらには世界レベルの成績は上がらないし、あちらに進めばいいという道筋すら見えない。中の下の家に生まれて、親の精一杯で塾には通わせてもらったけど、社会上昇の機会は多分なかった。それを言ったら夢がないから隠されているのである。世界には分断がある。あそこには「絶対に」行けなかった。悲しいな。

トム・ヒドルストンがパブリックスクール出身と知らなかったです。あのチンピラ感は良家の不良だったのか。ティルダ様もですって! で、嫌いだったんだって学校。それでグレてデレク・ジャーマンの映画に出たのねぇ。グレ方が高級ですわ。ハーバードやイェールは眼に入らず英国に憧れるのは、日本の近代化がお手本にした英国を深く内面化してるからじゃないの、と考えました。植民地支配が行き届いています。