絶望という名の電車

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自分の中に「絶望への嗜好」がある。絶望は甘露です。これまで観て超一級の絶望が味わえる映画を集めました。


2015 サウルの息子

サウルの息子(字幕版)

ホロコーストは人類最大の惨禍であり、特殊労務班ゾンダーコマンドは人間の想像力の彼方の過酷な職業(職業?)。絶滅収容所に運ばれたユダヤ人の中から屈強な男が選別されガス室に送られず、ガス室の後処理をやらされるのがゾンダーコマンドです。恐ろしく無駄のないナチのシステム。サウルになって、ゾンダーコマンドのいつ終わるかわからない「毎日」の不条理が体験できる。サウルの顔が好き。


1985 SHOAH ショア

SHOAH ショア(デジタルリマスター版) [DVD]

同じくホロコーストの貴重な証言集ドキュメンタリー。サバイバーの語りが主で重いです、これ以上重い映画が作れるだろうか。九時間半。ゾンダーコマンドの生き残り、トレブリンカ、ヘウムノ、アウシュビッツそれぞれの絶滅収容所の「処理」の違い、移送列車の地獄、ワルシャワ・ゲットー殲滅の悲惨。言葉で語られるだけです。凄まじいです。


2011 スノータウン

スノータウン [DVD]

ジャスティン・カーゼル監督(好き)のメジャー作品一本目。オーストラリア郊外のシリアルキラーの実話で、殺しとしては雑な実話が、画が素晴らしく音楽が素晴らしい映画に。全編を浸す絶望。世界は無慈悲であり救いはない。冷え冷えします。大好き。


2003 モンスター

モンスター [DVD]

シャーリーズ・セロンが汚い中年太りの娼婦を演じてアカデミー主演女優賞。ということも凄いんですけど、LGBT で忘れらない余韻がある。愛、愛って何だ。彼女を救い、殺させたのが愛。貧しさと無教育、救いのない世界で光った愛。とても惨めで美しく悲しい。


2007 ノーカントリー

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

ハビエル・バルデムが最恐の殺し屋で速い。出会ったら殺されると思え。理がない、いや、本人はあると言うんだが、本人にしかわからない「理」。他と違い作り話で、話が絶望的なのではなく、ハビエル・バルデムという存在との相互理解の不可能性に絶望する。世界には闇がある。出会わないように回避するしかない。いい映画です。

絶望とは終わりのない「状況」で、恐怖とも嫌悪とも違う。負の「感情」とは違います。真空で冷たくどこまでも広がっている。それが好きらしい。